トラフィック生成において高くつく失敗は、戦術面ではめったに起こりません。件名の書き方がまずかったり、内容の薄いブログ記事を出したりして失うのはせいぜい一週間です。ところが測定モデルが壊れていると一年を失います。その一年のあいだに下されるすべての判断が、チームの思っている意味とは違う数字にもとづいてしまうからです。以下に挙げる十の失敗は、検索、コンテンツ、メール、ソーシャル、リファラル、ダイレクトというチャネルミックス全体にまたがる、戦略と測定のレベルにあるものです。そのトラフィックが自然に獲得したものであれ、費用を払って得たものであれ、誰にも理由がわからないまま届いたものであれ、同じように当てはまります。
この記事の要点
- チャネルごとに担う役割が違うため、単一の評価基準では読み違えます。まだ接点のない人に出会わせるチャネルと、既存の読者を呼び戻すチャネルを、コンバージョン率で並べて順位づけすることはできません。
- ラストクリックのアトリビューションが示すのは最後の一歩であって、原因ではありません。これを原因として扱うと、その手前で起きているすべてのことから予算が体系的に引き上げられていきます。
- 再訪のともなわない量は、借り物のオーディエンスです。人がどれだけ戻ってくるかという数字こそが、資産とキャンペーンを分けます。
- 成長は、何かと比べて測らなければなりません。基準値がなければ、季節変動も市場の変化も成功した戦略も、すべて同じ形に見えます。
- コンバージョンしないページへのトラフィックは、同じ問題のサンプルを大きくするだけです。着地点を先に、獲得はそのあとに、という順番で進めてください。
失敗 1: すべてのチャネルを同じ数字で測る
チャネルは、同じ商品を供給する取り替えのきく仕入先ではありません。比較検討のクエリで訪れたオーガニック検索の訪問者は、すでに意図を表明しています。投稿をスクロールして通り過ぎるソーシャルの訪問者は、何も表明していません。メールの購読者はすでにサイトを訪れたことがあり、もう一度来てくださいと呼びかけられている立場です。この三者をコンバージョン率で採点すれば、そのチャネルが果たした仕事ではなく、もともと備わっていた意図の強さで順位がつくだけです。
これを正すには、どのダッシュボードを見るよりも前に、各チャネルに役割をひとつと、その役割を映す数字をひとつ割り当てておくことです。検索なら商用ページへの見込みの高いセッション、コンテンツならアシストコンバージョンやニュースレター登録、メールなら再訪率、ソーシャルなら許容できるコストでの新規訪問者数、というかたちです。役割が違えば物差しも違い、チャネル横断の順位表は作りません。
失敗 2: ラストクリックのアトリビューションを原因の説明として読む
ラストクリックのレポートが答えているのは、コンバージョンの瞬間にどのソースが居合わせたか、という狭い問いだけです。その人がなぜコンバージョンしたのかには答えていません。このレポートに従って予算を動かすと、需要をつくり出すチャネルから需要を刈り取るチャネルへ資金が移り、やがて刈り取り側のチャネルも落ち込みますが、その理由はレポートからは説明できません。
モデリングの案件を立ち上げなくても、二つの習慣で歪みを減らせます。ひとつは、単一のモデルを信じるのではなく、複数のアトリビューションモデルを突き合わせることです。あるチャネルについてファーストタッチとラストタッチの差がどれだけあるか、それ自体がひとつの発見になります。もうひとつは、コンバージョンした顧客に、最初にどこで知ったかを尋ねることです。自己申告と計測されたアトリビューションが食い違うところには、トラッキングでは見えないチャネルが潜んでいます。口コミ、ポッドキャスト、計測できないソーシャル上の共有、オフラインでの言及などです。
失敗 3: 制約が再訪にあるのに、量を最適化してしまう
セッション数は最も動かしやすい数字であり、事業成果とのつながりは最も薄い数字です。新しい訪問者が情報収集のクエリで訪れ、二度と戻らず、消費するのはサーバーの容量だけであれば、トラフィックを倍にしながら売上を減らすこともありえます。
再訪率のほうが診断に役立つ数字です。何かが積み上がっているかどうかを表すからです。戻ってこないトラフィックは、毎月あらためて満額を払って獲得し直さなければなりません。戻ってくるトラフィックは複利で効いていき、それを生むチャネル、つまりメール、ダイレクト、ブランド検索は、予算の見直しの場で守る価値のあるものです。一定の期間を固定して、チャネル別に新規と再訪を追ってみてください。量のグラフが示す姿とは大きく異なる絵が見えることがあります。
失敗 4: 季節変動や市場の流れを成長と取り違える
右肩上がりの線が戦略の有効性の証拠になるのは、比較できる何かが動かずにいる場合だけです。小売は十一月に伸びます。BtoB のトラフィックは十二月下旬と八月に落ちます。カテゴリ全体の検索需要は、個々のサイトには制御できない理由で動き、サイトはシェアを失いながらセッションを増やすこともあります。
前月比を見る前に、同じ週で前年同期と比べ、その裏側にあるクエリ需要が同じ時期に動いていないかを確認してください。Google Search Console の検索パフォーマンス レポートでは表示回数とクリック数を分けて見られるため、まったく異なる二つの状況を区別できます。需要が伸びてシェアを維持したのか、需要は横ばいでシェアを多く取ったのか。自分たちの働きに帰せられるのは後者だけです。
失敗 5: 複数のチャネルを同時に立ち上げる
検索、メール、ソーシャル、有料配信を同じ月に始めれば、トラフィックは増えますが、その理由の説明は手に入りません。のちに予算を削らなければならなくなったとき、どのチャネルを削るべきかの根拠がないため、会議で最も弁護しやすい数字がそのまま判断を決めてしまいます。
効果が見えるだけの間隔を空けて開始をずらし、必要な間隔がチャネルによって違うことを受け入れてください。メールは数日で目に見える反応が出ます。有料配信は数時間です。コンテンツと検索は数か月の遅れをともなって働きます。効果が現れる前に打ち切られてしまうのは、まさにこの遅れのためです。どうしても同時に立ち上げざるをえない場合は、せめて地域やオーディエンスセグメントをずらして、比較材料をひとつ残しておいてください。
失敗 6: オーディエンス全体を自社のものではない基盤の上に築く
フォロワー数とは、他社の配信力を借りているにすぎないものであり、その保持は相手の裁量にゆだねられ、相手のアルゴリズム、価格設定、モデレーションに左右されます。無料だったリーチが有料になることもあり、アカウントは弁明の機会もなく制限されることがあります。リスクは、特定のプラットフォームが破綻することではありません。結果を自分では左右できない、ということがリスクです。
戦略上の問いは単純です。最大のチャネルが明日消えたとして、トラフィックは何パーセント残り、オーディエンスにはどうやって連絡しますか。その答えになるのは、自社で保有する資産、すなわちメールリストや、ダイレクトとブランド検索の需要を持つサイトです。プラットフォーム上のチャネルは、それ自体を目的地とみなすのではなく、人をそうした資産へ引き渡す獲得の窓口として扱うのが最善です。
失敗 7: コンバージョンさせるものが整う前にトラフィックを獲得する
トラフィックは、着地点がすでに果たしている働きに掛け合わされる係数です。ページのコンバージョンが弱ければ、訪問者が増えても同じ失望のサンプルがより高いコストで大きくなるだけで、結果はあいまいになります。振るわない成果がソースに由来するのかページに由来するのか、もはや言えなくなるのです。
上乗せする前に、いまのトラフィックが何を生んでいるのかを把握し、訪問者が足りないという見立ては前提ではなく検証すべき仮説として扱ってください。測定についてはコンバージョン率の基準値を定めるガイドで、何から手をつけるべきかについてはコンバージョン最適化のノートで扱っています。同じ順序は購入したトラフィックにも当てはまり、そこで加わる調達面の落とし穴はウェブサイトトラフィックを購入するときの失敗の一覧にまとめてあります。
失敗 8: 実験の途中でチャネルの分類を変える
トレンドの線が比較可能なのは、その下にある分類が変わらずにいた場合だけです。三月に utm_medium=social とタグ付けされたキャンペーンが四月に utm_medium=paid-social になれば、一方のチャネルが崩れ、もう一方が現れたように見えます。変わったのはラベルだけですが、グラフの上では戦略が失敗しているように映ります。
測定期間が始まる前に分類を固定し、キャンペーンの担当者の目に触れる場所に文書として残してください。GA4 でセッションがデフォルトのチャネルグループに振り分けられる仕組みは、一貫したタグ付けに報い、その場しのぎを罰するルールに従っています。一度決めておく価値のある命名の判断については、UTM タグ付けの規約で扱っています。二つめの制約は保持期間です。イベント単位、ユーザー単位の詳細なデータは Google のデータ保持に関するドキュメントの設定に従って期限切れになるため、来年おこなうつもりの比較のためのデータは、いまエクスポートしておく必要があります。
失敗 9: ブランド需要を自分たちがつくった需要として数える
ブランド検索、ダイレクトトラフィック、再訪問者は、その多くが過去の取り組みや、どこか別の場所での活動の収穫です。これらを非ブランドの獲得と一緒にして、オーガニックやダイレクトというひとつの数字にまとめてしまうと、オフラインで認知をつくったキャンペーンのおかげで無関係な SEO の施策が成功しているように見えたり、その逆が起きたりします。
ブランドクエリと非ブランドクエリを分け、別々に報告してください。ブランドの線はブランドがどれだけ知られているかを測り、非ブランドの線はまだ自社を知らない人にサイトが見つけられているかどうかを測ります。両者は異なる取り組みに、異なる時間軸で反応します。一方が改善するあいだにもう一方が衰えていく状況は、年次のレビューではなく早い段階で捕まえる価値があります。
失敗 10: 停止条件を決めないまま進める
失敗の基準を持たないチャネルは、打ち切られることはなく、ただ静かに干上がっていきます。予算は残り、レポートは続き、機会費用は判断として表に出ないまま積み上がります。ほかの九つの失敗を生かし続けているのが、この失敗です。
チャネルを始める前に停止条件を書いてください。同僚が解釈を尋ねずに適用できる、機械的な言葉で書きます。指標、しきい値、見直しの日付、そしてしきい値の両側で何が起きるかです。この条件には、忘れられがちな場合、つまり成功も含めておくべきです。始めたときの問いに答えを出したチャネルは、惰性で続けるのではなく、終えることができます。
これらを早期に捕まえるレビューの型
上に挙げた失敗のほとんどは、四半期ごとのレビューで正しい問いを正しい順序で立てれば見えてきます。
| 問い | 持ち寄る根拠 | 浮かび上がる失敗 |
|---|---|---|
| 各チャネルにどんな役割を与えましたか | 開始前にそのチャネルへ割り当てた指標 | 失敗 1 と 10 |
| 昨年の同じ週はどうでしたか | 前年同期比のセッションとクエリ需要 | 失敗 4 |
| このトラフィックのうちどれだけが戻ってきましたか | チャネル別の新規と再訪 | 失敗 3 と 6 |
| ラベルは変わっていませんか | タグ付けの規約とチャネルの定義 | 失敗 5、8、9 |
手元のデータから答えられない問いがあれば、その空白こそが次に取り組む仕事です。次のキャンペーンの前に埋めるほうが、そのさらに次のキャンペーンの最中に気づくよりも安く済みます。
よくある質問
トラフィック生成の失敗のうち、最も高くつくのはどれですか
測定にまつわる失敗です。居座り続けるからです。出来の悪いキャンペーンが無駄にするのは、一度きりの自分の予算だけです。壊れたアトリビューションモデルや一貫性のないチャネル分類は、それが放置されているあいだに下されるすべての判断を、どのキャンペーンを繰り返すかという判断も含めて、静かに損なっていきます。
ダイレクトトラフィックはチャネルですか
残余のカテゴリと読むほうが適切です。ダイレクトには、正真正銘のブックマークや直接入力による訪問と、リファラーが失われたセッションが一緒に集まります。後者にはタグの付いていないリンク、一部のアプリやメールクライアント、特定のリダイレクトが含まれます。ダイレクトの線が伸びているときは、喜ぶ前にタグ付けの不具合の可能性として調べてみる価値があります。
トラフィックを増やせば低いコンバージョン率を埋め合わせられますか
算術のうえでは可能ですが、経済的に見合うことはまれです。コンバージョンを二倍にするためにトラフィックを二倍にすれば獲得コストも二倍になりますが、コンバージョン率を上げれば、すでに費用を払っているものも含めてすべてのチャネルが同時に改善します。どちらの選択肢も取れるなら、着地点のほうが安く手を入れられる場所であることが多いのです。